マイホームの購入を検討中の方のなかには、親から支援の申し出を受けている方もいることでしょう。
家族によって色々な購入の経緯や形がありますが、「親から支援を受けても問題ないのか」だったり、親からの支援の話があがっている方にとっては、「どのくらいの金額を支援してもらったのか」など、さまざまな点が気になるかもしれません。
購入を急いだり、支援を嬉こぶ反面、支援を受けて購入したことによる注意事項まで気が回らない方もいることでしょう。
そこで本コラムでは、親からの支援を受けて住宅購入をしても問題がないのか解説します。さらに、親からの支援の平均額や活用できる特例、必要な手続き、注意点もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
もくじ
親から支援を受けて住宅を購入する方の割合って?
住宅購入の際、1.2割の方が親からの支援を受けています。
一般社団法人不動産流通経営協会の「不動産流通業に関する消費者動向調査」の結果報告書によると、親からの支援を受けた世帯の割合は住宅購入者全体の14.2%でした。
さらに30代の購入者に限定すると、支援を受けた割合は20%を超えています。
なお祖父母からの援助額は1,155万円と、親よりも若干金額が上回っています。
住宅購入時の親からの支援の平均額は?
親からの支援の平均額は以下の通りです。
この金額では、住宅購入資金の全額をカバーすることは困難かもしれませんが、頭金としては充分な金額といえます。
住宅ローンは一定金額以上の贈与を受けると原則として「贈与税」がかかる
贈与税は、一年間に一定額以上の贈与を受けた場合にかかる税金です。
2024年現在、年間110万円までの贈与については贈与税がかかりません。
住宅取得のための資金贈与には、特別な控除制度があります。
これにより、一定の条件下で通常より高額の贈与が非課税となります。
受贈者の年齢や取得する住宅の種類、床面積などの条件があります。
また、特例の非課税限度額は、年によって変動し、また住宅の省エネ性能などによっても異なります。
これら特例を利用するには、一定の期間内に必要書類を添えて税務署に申告する必要があります。
普段、聞きなれない税法を考慮していかなければならないため注意をしましょう。
必要に応じてプロに意見を求めましょう。
親からの支援を受けて住宅購入をする場合に活用したい特例や制度
親からの支援を受けて住宅購入をする場合は、贈与税が課されないように以下の特例や制度を上手に活用しましょう。
それぞれについて、詳しく説明します。
住宅取得資金贈与の非課税の特例
住宅資金贈与の非課税の特例とは、2022年1月1日から2023年12月31日までの期間に、住宅の新築・取得や増改築などの目的で直系尊属(父母や祖父母など)から資金贈与を受けた場合に、非課税枠を利用することで贈与税の負担を抑えられる仕組みです。
非課税となる金額は、以下のように定められています。
以下は、適用を受けるための主な要件です。
※より詳しい内容は、国税庁のホームページよりご覧いただけます。
相続時精算課税制度
相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母または祖父母から受けた贈与について、通算で2,500万円(特別控除額)までは贈与税が課されない仕組みです(特別控除額を超えた部分に対しては、一律20%の税率で課税)。
なお、贈与をした父母・祖父母が死亡した時点で、「贈与財産の贈与時の価額」と「相続財産の価額」を合計した金額から相続税額を計算し、一括して相続税として納税する必要があるのでご注意ください。
相続時精算課税制度の適用を受けるためには、贈与を受ける側が18歳以上である必要があります。
また、後述するように税務署に対して所定の手続きも行わなければなりません。
ちなみに、同じ人物からの贈与に関しては、相続時精算課税制度と次の章で説明する暦年課税制度は併用できず、どちらか片方のみが適用されます。
相続時精算課税制度は、受贈者が贈与者ごとに適用の有無を選択することが可能です。
ただし、いったん選択すると贈与者が死亡するまで継続して適用され、暦年課税制度に戻せなくなります。
暦年課税制度
相続時精算課税制度が適用されていない場合の贈与には、暦年課税制度が適用されます。
暦年課税制度の場合、年間110万円(基礎控除額)までは贈与税がかかりません。
基礎控除額を超える金額の贈与を受けた場合は、国税庁ウェブサイトに掲載されている「贈与税の速算表」の税率・控除額に基づいて贈与税が課されます。
なお、18歳以上の方が直系尊属からの贈与(特別贈与)を受けた場合は、通常の贈与(一般贈与)よりも税率や控除額の面で有利になり、課税額が少なくなります(基礎控除額差引後の金額が300万円以下の場合は、特別贈与も一般贈与も同じ課税額です)。
住宅購入時に親からの支援を受ける場合に必要な手続き
ここでは、前の章でご紹介した特例を活用したり、制度の適用を受けたりするために必要な手続きをご紹介します。
住宅取得資金贈与の非課税の特例を受けるための手続き
住宅取得資金贈与の非課税の特例を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの期間に、「贈与税の申告書」に所定の書類を添えて納税地の所轄税務署に提出しなければなりません。
以下は、提出する書類の例です。
相続時精算課税制度の適用を受けるための手続き
相続時精算課税制度の適用を受けるためには、贈与税の申告書の提出期間である最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、納税地の所轄税務署に「相続時精算課税選択届出書」を提出しなければなりません。
また、受贈者の氏名や生年月日、贈与者の直系卑属であることを証する戸籍謄本などの書類も添付する必要があります。
記入方法などの詳細は、国税庁ウェブサイトをご覧ください。
上述したように、いったん相続時精算課税制度を選択すると撤回できません。事前に税理士などと相談し、納得したうえで手続きしましょう。
暦年課税制度の適用を受けるための手続き
暦年課税制度の適用を受けるための手続きはありません。
相続時精算課税制度を選択していない場合は、暦年課税制度が適用されます。
なお、1年間に110万円(基礎控除額)を超える贈与を受けた場合は、「贈与税の申告書」を税務署に提出し、「贈与税の速算表」に基づいて算出された金額の贈与税を納付しなければなりません。
以下は、提出する書類の例です。
※これらが基本的な手続きですが、個人の状況によって追加の要件がある場合もあります。また、不動産の譲渡や株式の売却など、取引の種類によっても手続きが異なる可能性があります。
住宅購入時に親からの支援を受ける場合の注意点
親から住宅購入資金を受取ること自体には、法的な規制はありません。
ただし、贈与税を納めなければいけない場合は、適切に申告・納付を行いましょう。
贈与税を納めなければいけないにもかかわらず、申告・納付をしていない場合は、後日税務調査を受け、無申告加算税を課される可能性もあります。
住宅購入資金の贈与を受ける場合は、本記事でご紹介した特例や制度を活用することをおすすめします。
そのうえで贈与税が発生する場合は、期限までに申告や納付を行いましょう。
なお、相続時精算課税制度を選択した場合、相続時に「小規模宅地等の特例」は受けられません。
小規模宅地等の特例とは、相続時に土地の相続税評価額を最大で80%減額できる制度です。
しかし、特例の適用を受けるためには、土地を「相続」や「遺贈」によって取得している必要があり、「贈与」は対象外となります。
住宅を建設するための土地の贈与を受けるのであれば、事前に税理士などに相談することをおすすめします。
住宅購入時に親からの支援を受ける場合は、特例などを活用しよう
住宅購入時に親からの支援を受けると、贈与税が課せられるケースがあります。その際は適切に申告・納付を行いましょう。
贈与税を納める必要があるにもかかわらず、申告や納付をせずに放置していると、後日税務署から税務調査を受けたうえで無申告加算税を課される可能性があるのでご注意ください。
なお、親から住宅購入資金の提供を受けた場合は、住宅取得資金贈与の非課税の特例を活用するとよいでしょう。
この特例は相続時精算課税制度または暦年課税制度との併用が可能です。
どの組み合わせが有利になるのか知りたい場合や、その他お困りのことがある場合は最寄りの税務署等で相談することをおすすめします。
まとめ
親からの支援を受けて住宅を購入することは、若い世代にとって大きな助けとなります。
しかし、法律や税制面での複雑さ、家族関係への影響など、考慮すべき点も多くあります。
重要なのは、親子間で十分なコミュニケーションを取り、お互いの将来設計を踏まえた上で決断することです。
また、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることで、より良い選択ができるでしょう。
親からの支援は大きな機会ですが、同時に責任も伴います。この支援を将来の資産形成の足がかりとし、自立した経済生活を築いていくことが大切です。
最後に、制度や税制は頻繁に変更されるため、常に最新の情報を確認することが重要です。
この説明は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の状況に応じて異なる場合があります。
具体的な行動を起こす前に、必ず最新の情報を確認し、専門家に相談することをお勧めします。