住宅ローンの返済には、毎月の返済に加えて、年に2回のボーナス月に多く返済を行うボーナス返済を選択することができます。
「毎月の返済負担をできるだけ軽くしたい」という気持ちから、ボーナス払いの利用を考えている人もいるのではないでしょうか。
ボーナス払いを利用するにあたっては、仕組みやメリット・デメリットをしっかりと理解しておく必要があります。
ボーナス払いを利用することで、途中で支払いが困難になったり、最終的な利息負担が大きくなったりすることのないように、しっかりとした返済計画を立てるようにしましょう。
もくじ
住宅ローンのボーナス払いとは?
住宅ローンのボーナス払いとは、毎月の返済額に加え、ボーナス月に多く返済する方法のことです。
具体的には、年に1〜2回(通常は夏と冬)のボーナス時期に追加で返済を行う方式です。
返済総額に占めるボーナス払いの割合は自由に決めることができますが、多くの金融機関は40%から50%あたりで上限を設定しています。
ボーナス払いを利用する際には、住宅ローンを借入れる金融機関が定める範囲内で、無理のない金額に設定するようにしましょう。
また、契約当初に決めたボーナス払いの割合やボーナス払いの月などを後で変更できない金融機関もありますので、あらかじめ変更が可能かどうかを確認しておきましょう。
住宅ローンの返済方法:元利均等返済と元金均等返済
住宅ローンの毎月の返済方法には、元利均等返済と元金均等返済の2種類があり、返済額の計算方法が異なります。
元利均等返済
元利均等返済は、毎月の返済額が一定になる返済方法です。返済が進むにつれ返済額に占める元金と利息の割合が変化します。借入当初は返済額に占める利息の割合が大きく、元金の減るペースが遅いため、そのほかの借入条件が同じであれば、次に説明する元金均等返済よりも総返済額は大きくなります。
このような特徴から、元利均等返済は毎月の家計支出を安定させたいかたなどに向いています。
元金均等返済
元金均等返済は、毎月の返済元金が一定になる返済方法です。借入当初は住宅ローン残高が大きい分、初回の返済の支払利息が最も多くなり、毎月の返済額は返済が進むにつれ次第に少なくなっていきます(変動金利型では金利上昇によって返済額が増えることもあります)。元利均等返済よりも元金の減るペースが早いため、そのほかの借入条件が同じであれば、元利均等返済よりも総返済額は小さくなります。
住宅ローンのボーナス返済を利用するメリット
毎月の返済額を抑えられる
ボーナス払いを活用することで、毎月の返済額を抑えられます。また、ボーナス払いの割合が高いほどその効果が高まります。
毎月の返済額が抑えられれば急な出費にも対応できますし、預貯金に回すお金を増やすこともできます。
住宅ローンの返済以外の出費に柔軟に対応できる点が、ボーナス払いを利用するメリットといえるでしょう。
また、車のローンや教育ローンの支払いがある場合も、ボーナス払いを利用して毎月の返済を抑えることで家計に余裕を持たせることができます。
総支払利息の削減
ボーナス払いで元金を大きく減らすことができるため、長期的には支払う総利息額を減らせる可能性があります。
返済期間の短縮
定期的に大きな金額を返済することで、ローンの返済期間を短縮できる可能性があります。
住宅ローンのボーナス払いを利用する際の注意点について
住宅ローンのボーナス払いを利用するにあたっては、以下の点に注意しましょう。
無理のないボーナス払い額を設定する
「ボーナスが年に2回支給される」と思っていても、急な業績悪化などの理由で支給されない、もしくは減額される可能性があります。そのため、ボーナスが支給されなかったとしても返済できる程度の、無理のない割合に設定することが大切です。
金融機関のウェブサイトにはボーナス払いを利用した際の返済額を知ることができるシミュレーターが用意されているので、ボーナス払いの割合について複数のパターンでシミュレーションを行い、最終的に無理のない返済額に収まる割合を決めましょう。
ボーナスが支給されなかった際の対処法を考えておく
ボーナスが支給されなかった際は預貯金で支払えればよいのですが、その余裕がないと返済ができなくなってしまいます。
一定期間返済ができなくなってしまうと信用情報機関に信用事故情報として登録される可能性があります。
信用事故情報として登録された場合、クレジットカードの作成やキャッシングの利用などが難しくなってしまいます。
また、返済が遅れると遅延損害金が発生し、毎月の返済額に日割り加算されます。
返済が遅延すればするほど遅延損害金の金額も大きくなるため、返済に遅れないように、また遅れてしまった場合もなるべく早く返済するようにしましょう。
急にボーナスが支給されなかった際も住宅ローンの返済ができるよう、最低でも、1年間分のボーナス払い額は預貯金で確保しておくようにしましょう。
資産運用を行っている場合は運用益をボーナス払いに充てることもできますが、その時の相場が必ずしも良いとは限りません。
不確定な要素に頼るのではなく、必ず支払える方法で準備しておくことが大切です。
ボーナス払いが難しくなった時の対処法は?
ボーナス払いを利用しており、ボーナス月の支払いが難しくなった際にはどのように対応すればよいのでしょうか。
考えられる対処方法として、以下のようなものが挙げられます。
借入れている金融機関に相談する
例えば、ほかの手段で資金調達が可能であれば、「ボーナス払いの月を変更したい」といった要望に応えてくれる金融機関もあります。
窓口で相談する必要があるケースや、専用のアプリで簡単に手続きができるケースもありますので、まずは借入れている金融機関のウェブサイトで確認してみましょう。ウェブサイトではわからない場合は、コールセンターへ問い合わせてください。
一般的な手続き方法は、まず金融機関に変更したい内容を伝え、申請書類を提出した上で審査に通る必要があります。
変更手続きに手数料が発生するケースもありますので、併せて確認しておきましょう。
ボーナス払いの利用率は年々減少傾向にあると言われています。これは、終身雇用制度の変化や、ボーナスの減少傾向などが影響していると考えられます。
また、若い世代ほどボーナス払いを選択する割合が低いです。
その他では、地域による差も見られます。
大都市圏では、住宅価格が高いため、ボーナス払いを選択する割合が比較的高い傾向があります。
これは雇用形態の変化や、将来の収入の不確実性への懸念が影響している可能性があります。
多くの金融機関が依然としてボーナス払いオプションを提供していますが、以前ほど積極的には勧めていないのが現状です。
住宅ローンを借換える
契約内容を変更できない場合は、住宅ローンを借換える方法があります。
住宅ローンを借り換え、現在の収入状況に合った返済方法に変更することで、ボーナス払いの返済ができないといった状況を回避できます。
ただし、借換えるためには新規で申込み、審査に通る必要があります。
収入や勤務年数などの状況が最初の住宅ローン借入時と比べて悪くなっている場合、希望する借入金額によっては審査に通らないこともあります。
また借換えには事務手数料や登記費用など諸費用がかかる点や、諸費用も含めた借換えにより借入額が増えると利息負担が増える点には注意が必要です。
住宅ローンの借り換えとは、現在組んでいる住宅ローンを、条件の異なる新しいローンに切り替えることです。
主な目的は、毎月の返済額を減らしたり、総支払額を抑えたりすることです。
借り換えの主なポイント:
金利の低下:現在のローンより低金利のものに借り換えることで、支払利息を減らせる可能性があります。
返済期間の調整:残りの返済期間を延長または短縮することで、月々の返済額や総支払額を調整できます。
ローン種類の変更:変動金利から固定金利へ、またはその逆などの変更ができます。
諸費用の考慮:借り換えには手数料などの費用がかかるため、メリットとデメリットを慎重に比較する必要があります。
借り換えのタイミング:金利動向や自身の経済状況を考慮し、最適なタイミングを見極めることが重要です。
ボーナス払いが向いている人と向いていない人とは
<ボーナス払いが向いている人>
ボーナスが確実に支給される職場で働いている場合、ボーナス払いが適しています。
特に、大企業や公務員などの職業に就いている人は安定したボーナスを期待できます。
ボーナスを計画的に使うことができる人にとって、ボーナス払いは有効です。
ローン返済に使うと決めている場合、使途が明確で予算管理がしやすくなります。
毎月の返済額を少なくし、家計に余裕を持たせたい人には、ボーナス払いが適しています。
ボーナス月にまとめて返済することで、月々の支出が軽減されます。
<ボーナス払いが向いていない人>
ボーナスの額が年によって変動する場合や、支給が不確実な場合には、ボーナス払いはリスクが高くなります。収入の変動により返済が困難になる可能性があります。
ボーナスを得た際に計画的に使うことができず、浪費しがちな人にはボーナス払いは向いていません。
返済のために確保するべきボーナスが他の支出に回ってしまうリスクがあります。
通常の月々の収入だけで無理なく返済できる人は、ボーナス払いを選ぶ必要はありません。
月々の収入で安定した返済を続けることができれば、返済計画がシンプルになります。
ボーナスを家計の補填や特別な出費に充てたい人には、ボーナス払いは適していません。
ボーナスをローン返済に回さないことで、自由な使い道を確保できます。
まとめ
住宅ローンのボーナス払いを利用することで毎月の返済額を抑えられますが、最終的な利息負担が大きくなる、ボーナスが支給されなかった時に返済が困難になる可能性があるといったデメリットもあります。
ボーナス払いを利用する際には、ボーナス月の返済額を無理のない金額に設定し、もしボーナスが支給されなかった時のことを考えて預貯金で備えておくことが大切です。
また、どうしても返済できない場合は借換えという方法もありますが、申込んで審査に通るまでには時間がかかるので、早めに行動を起こす必要があります。
そういう場合に備えて、住宅ローンを借入れた後でもボーナス払いの月を変更できるなど、柔軟に対応してくれる金融機関を選択するのもよいでしょう。