住宅ローンは一般的に30年や35年など長きにわたり返済します。
借入当初は返済できると考えていたとしても、返済途中で収入や支出が変化し、予定外に返済が厳しくなることもあるかもしれません。
住宅ローンの返済は口座振替となりますが、振替できなかった場合、延滞したことになります。
延滞が一時的なものかどうかでも状況は異なりますが、返済が厳しくなるとどうなるのか心配されている方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、滞納した場合の影響や住宅ローンの返済が厳しくなった場合の対応策について解説します。
もくじ
住宅ローンを滞納するとどうなる?
まず、住宅ローンを滞納したとき、どのような状況になるか解説します。
状況は滞納している期間によりますが、滞納期間を1ヶ月から12ヶ月ぐらいまでとして、滞納期間が短い順に紹介していきます。
滞納した場合、追加で利息がかかる
口座振替日に引き落としができなかった場合、その翌日から遅延損害金を支払う必要があります。
遅延損害金は、返済額を支払うまでの期間に応じて発生しますので、なるべく早めに対応しなければなりません。
基本的には次の引き落とし日までの1ヶ月以内に支払えば、数百円程度で済むかもしれませんが、1ヶ月分滞納した場合、次の引き落とし日との支払間隔が短くなり、2ヶ月分をまとめて支払わなければならない状況になってしまいますので、注意が必要です。
滞納を繰り返すと、返済の難易度があがる
勘違いや手続きミスで口座振替ができなかった場合は、一時的な滞納ですので、すぐ支払えば済むでしょう。
しかし、滞納が何度も続く場合、住宅ローンの返済自体が厳しくなっている可能性があります。
遅れても1ヶ月以内で返済していれば大事に至らないかもしれませんが、ぎりぎりで返済していると、1ヶ月以上遅れてしまう可能性もあります。
滞納を繰り返している場合は、家計の支出を見直すなど、早めの対応をしましょう。
信用情報に記録される
滞納が数ヶ月以上続くと、信用情報に記録されます。
信用情報は、個人が借り入れする際、金融機関がこれまでの返済履歴などを確認するための情報で、信用機関が管理しています。
一定期間以上の滞納や自己破産などが信用情報として残りますので、新たにクレジットカードを作ったり、ローンを組んだりするときに影響してきます。
この情報は、記録される内容によって5年などの保存期間がありますので、順調に返済できるようになったとしてもしばらくは記録として残ります。
住宅ローンを利用する際に、携帯電話料金の滞納により、審査が通らなかった方もいらっしゃるでしょう。
これも金融機関が信用情報を確認した結果と言えます。
なお、信用機関には、株式会社日本信用情報機構、全国銀行協会、割賦販売法・貸金業法指定信用情報機関の3機関あります。
信用情報に記録されているかどうか、申請すれば確認(開示)することができますので、ローンを借りる前で心配な方は確認しておきましょう。
開示方法につきましては、下記からご確認ください。
<各信用機関の開示方法>
競売と任意売却
滞納が続いた場合、金融機関や保証機関は、融資の対象となった住宅を売却して融資金額を回収することになります。
滞納が1ヶ月以上続いてから1年以内には競売が開始されることが多いようです。
1年滞納が続くと返済はできない状況になっているかと思いますので、やはり最初の1ヶ月以内の対応が重要となるでしょう。
一方、任意売却は競売前に、債権者である金融機関や保証機関と相談した上で、住宅を売却し、その資金で返済する方法です。
競売よりも高く売却できることもあり、債権者にとっても競売より有利となる場合があります。
ただ債権者との交渉は経験と知識が必要となりますので、専門家に依頼することになるでしょう。
自己破産
住宅ローンが返済できなくなると、他のローンも返済できない可能性が高くなります。
普通は、収入に見合う支出をしますが、収入が徐々に上がるにしたがって支出も増え、突然、収入が減っても簡単に支出を減らすことはできません。
そのため、住宅ローンの返済が厳しくなると、家計の状況が悪化していることから、他の借金があると自己破産という方法を選択しなければならなくなる可能性が出てきます。
ただ自己破産という方法だけでなく、任意整理や特定調停、個人再生という方法もあり、状況に応じて最適の方法を選ぶことができます。
自己破産は、住宅は競売にかけられますが、借金を返済する必要はなくなります。
再スタートを切れる方法ですが、「官報」に氏名等が掲載され、従事できない仕事も出てきます。
新たにローンを組むこともできませんので、精神的な負担はなくなりますが、後々を考えると選びにくいかもしれません。
一方、任意整理は将来支払う利息額をなくして毎月返済できる金額に再設定してもらう交渉をします。
債権者も自己破産を選ばれてしまうと融資金額を回収できなくなる可能性がありますので、交渉に応じるかもしれませんが、交渉には法的な知識や経験が必要となります。
また個人再生は、一定の安定した収入があることが条件となりますが、適用することができれば、返済計画を立て、原則3年間で借金を返済します。
総返済額を大きく減らすことができますが、法律の知識が必要となります。
特定調停は、裁判所が債権者との話し合いを仲裁し、生活の立て直しに向けて返済条件の軽減を働きかける制度です。
継続して安定した収入がある人が対象となります。
これらの制度のうち、どの制度が適しているかは住宅ローンの残高、収入の状況など家計によって異なります。
また法律の知識が必要となりますので、基本的には弁護士などの法の専門家に依頼することになるでしょう。
住宅ローンの返済が厳しくなったときの金融機関の対応
都市銀行や地方銀行など、従来からの店舗型の金融機関は、住宅ローン融資時に保証料を受け取り、保証機関による審査も行われます。
住宅ローンの融資額が回収できないと、回収に費用をかけなければなりませんので、その場合に備え、保証機関から融資金額を受け取り、保証機関が金融機関の代わりに融資額の回収を行います。
ネット銀行等は外部の保証機関を使わず、内部で審査を行っています。
住宅ローンの返済額は、借入金額にもよりますが、毎月10万円前後となりますので、一度遅れると、挽回するのはかなり難しいでしょう。
金融機関も最初は電話で口座振替ができなかった旨と支払の案内をすると思いますが、1~3ヶ月遅れると、電話だけでなく記録が残るように郵便で案内を送ってきます。
6ヶ月も遅れると、住宅ローンを毎月少しずつ返済する権利がなくなり、一括返済のみしか選べなくなります。
滞納が続くと、法的な案内となり、一括返済を求めることになります。
返済が厳しくなったら、なるべく早く相談する
競売までの期間や流れは金融機関や保証機関によって異なりますが、おおむね滞納してから1年以内と考えておきましょう。
滞納した原因が、「他の支出が一時的に増えたため」「指定の口座に振り込み忘れたため」であればいいですが、収入減などが原因の場合、数か月以上返済が滞る可能性もあります。
住宅ローンは長きにわたり返済していくもので、経済や家計の状況によって返済が難しくなることもあることから、金融機関も対応するよう金融庁から求められています。
そのため、金融機関も返済の相談があった場合、適切に対応しなければなりません。
具体的には、一定期間、返済額を減額するなどの対応を行っています。
返済相談の専用窓口を用意している金融機関もあります。
住宅ローンの返済が厳しくなったら、金融機関も相談できる体制を整えていますので、なるべく早く相談しましょう。
住宅ローンを組む前にできること
住宅ローンを組む際、誰しも滞納することを想定はしていないでしょう。
住宅ローンの融資では金融機関や保証機関の審査もありますので、無理な借り入れはできないようになっています。
しかし支出の仕方は個々によって異なります、収入の割に支出額が多かったり、借金が多かったりすると、徐々に住宅ローンの返済は厳しくなります。
また審査の基準額まで借り入れしてしまうと、家計の変化に対応出来なくなる可能性もあるでしょう。
ご自身のお金の使い方から、無駄遣いしがちな人は、余裕を持って住宅ローンを利用することで、滞納して競売にかけられるリスクを軽減することができます。
相談が早いほど選べる選択肢は増える
ここまで簡単に、住宅ローンの返済が厳しくなった場合は、自己破産や任意整理など様々な方法があることを紹介しましたが、万一いずれかを選ばなければならなくなった場合でも、以降の最低限の生活は確保する必要があります。
たとえば自己破産の場合、価値のある資産は手元に残りませんが、一定額以下の資産は残ります。
また制度によっては、住宅を手元に残して返済を進めることができるものもあります。
制度としても一定の生活費は残るようになっていますので、この点も専門家に確認しながら進めてましょう。
また相談するタイミングによって選べる選択肢が変わります。
早く相談するほど選択肢は多くなりますので、金融機関との相談後でも不安が残る場合は法律の専門家等に相談しましょう。