住宅ローン控除は、正式には住宅借入金等特別控除といい、新築住宅や中古住宅の取得、増改築等で住宅ローンを利用した場合、一定金額が控除される制度です。
消費税が10%になったことによる負担を軽減するために、改正されましたので、基本的な仕組みとともに解説します。
もくじ
住宅ローン控除とは?消費税増税により改正
住宅ローン控除は、一定の要件を満たしていれば、年間で支払った所得税(住民税)から返金されます。
支払った税金から返金されますので、それ以上に戻ってくることはありません。
まずは簡単に住宅ローン控除のポイントをまとめます。
(1) 年末の「住宅ローン残高×0.7%が13年間控除されます。
(2) 所得税から引ききれなければ、翌年の住民税から控除されます。
※2024年1月1日以降に入居する住宅が対象
住宅ローン控除を適用するための要件
住宅ローン控除は、多くの人が適用できる制度ですので、要件のハードルは高くありませんが、念のため確認しておきましょう。
(1) 住宅ローンの返済期間が「10年以上」であること
(2) 自分自身で居住するための住宅であること
(3) 床面積が「40平方メートル以上」であること(※従来の50㎡以上から緩和)
(4) 借入金の年末残高が、住宅の取得価格の半分以上であること
(5) 省エネ基準に適合していること(2024年10月以降の新築住宅に適用)
(6) 合計所得金額が「2,000万円以下」であること
(7) 中古住宅の場合、耐震基準を満たしていること
(8) 民間金融機関、住宅金融支援機構等からの借入であること
借り入れから10年以内に一部繰上げ返済をする場合には注意しましょう。
確定申告の仕方
これらの条件を満たすことで、住宅ローン控除を受けることができます。
ただし、個々の状況によって適用条件が異なる場合があるため、詳細や特殊なケースについては税務署や税理士に相談することをお勧めします。
確定申告は、1月1日~12月31日の収入について申告し、納税する制度で、本来は毎年確定申告しなければなりません。
ただ会社員や公務員の場合、毎月の給与から税金の見込み額が差し引かれ、年末調整により、税金の過不足が調整されます。
そのため、会社員や公務員の多くは確定申告の経験がありません。
住宅ローン控除を適用するためには、この確定申告が必要になるのです。
確定申告は、様々な方法ですることができますが、国税庁のサイトで確定申告書を作成する方法が一番手軽でしょう。
税務署の確定申告書作成コーナーで作成する方法もあります。
サイトで作成すれば、印刷して税務署に郵送してもいいですし、そのままインターネットで申請することもできます。
確定申告の方法
(1) 最寄りの税務署で確定申告書を手に入れる。記入した確定申告書と必要書類を準備したら、税務署に持参するか郵送する。
(2) 最寄りの税務署の確定申告書作成コーナーで確定申告書を作成し、そのまま提出する。
(3) 国税庁のサイトから確定申告書等の必要書類をダウンロードし、記入した確定申告書と必要書類を準備したら、税務署に持参するか郵送する。
(4) 自宅等にて国税庁のサイト上で確定申告書を作成し、確定申告書と必要書類を準備したら、税務署に持参するか郵送する。
(5) 自宅等にて国税庁のサイト上で確定申告書を作成し、ネットで申請する。
確定申告書の書き方は、普段から確定申告書を提出しなければならない自営業者等と比較すると簡略化されています。
国税庁が公表している確定申告書の書き方を見ながら書けば完成するようになっており、大まかには次のようになっています。
確定申告書の書き方のポイント
(1) 源泉徴収票に記載されている金額を書き写す。
(2) 住宅の購入価格、床面積、取得年月日などの物件情報を記入する。
会社員や公務員は会社や団体等を通して配偶者の有無や支払保険料などを報告していますので、これらは普段と変わりません。
申告するのは、住宅ローン控除を適用できるかどうかを確認するための情報で、源泉徴収票の内容と取得した住宅の情報が中心となります。
国税庁のサイトで確定申告書を作成すれば、途中保存できますので、少しずつ進めることができますし、見本を見ても分からなければ税務署に電話をすれば回答してもらえます。
これまでも多くの会社員や公務員の人が初めての確定申告をしていますので、余裕を持って準備をし始めれば、問題なく確定申告をすることができるでしょう。
住宅ローン控除を適用するために必要なおもな書類
・(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
・本人確認書類
・建物・土地の登記事項証明書、建物・土地の不動産売買契約書(請負契約書)の写し
・源泉徴収票
・住宅ローンの残高を証明する「残高証明書」
確定申告の期限と確定申告の準備
確定申告は、2月16日から3月15日までに行う必要があります。
3月15日までと考えず、2月16日までに申告できるように準備しておくと安心です。
必要な書類は年末年始にまとめておき、確定申告書の作成も早めに始めておくといいでしょう。
住宅ローン控除で還付される金額をシミュレーション
ここまで住宅ローン控除の要件や必要書類などについて紹介しましたが、具体的にどの程度の税金が返金される(還付される)か見ておきましょう。
計算方法についても解説します。
住宅ローン控除 計算方法
・住宅取得価格:4,000万円
・頭金:1,000万円
・借入額:3,000万円
・金利:1%(固定金利)
・借入期間:35年
・入居日:2024年4月1日
・年収:600万円(給与所得のみ)
シミュレーション:
年末ローン残高の計算:
初年度末(2024年12月31日)のローン残高を約2,957万円と仮定します。
控除額の計算:
2,957万円 × 0.7% ≈ 20.7万円
控除限度額との比較:
一般住宅の場合、年間控除限度額は30万円です。
計算された控除額(20.7万円)は限度額以下なので、20.7万円が控除額となります。
13年間の控除総額:
20.7万円 × 13年 ≈ 269.1万円
年間の還付額(概算):
所得税率を仮に20%とすると、20.7万円 × 20% ≈ 4.14万円
このシミュレーションでは、初年度に約4.14万円の還付が見込まれます。
ただし、以下の点に注意が必要です。
ローン残高は毎年減少するため、実際の控除額も年々減少します。
所得税率は個人の所得によって変わります。
住民税からも一定額の控除があります(所得税の控除額の7%)。
実際の還付額は個人の状況によって大きく異なるため、正確な計算には税理士や金融機関のアドバイスを受けることをお勧めします。
また、オンラインの住宅ローン控除シミュレーターを利用するのも有効です。
早めの準備と必要書類の管理が重要
住宅ローン控除を適用している人は全員、初めての確定申告を経験していますので、見本を見ながら作成し、分からなければ税務署に問い合わせれば、誰でも申告することができます。
確定申告に対して過度に心配する必要はありませんが、正確に申告しなければなりませんし、期限もあります。
住宅ローン控除に必要な書類を年末年始から分類しておき、まとめてファイリングしておくなど、しっかり管理しておきましょう。
早めの準備と書類の管理をしておけば、余裕を持って確定申告をすることができるでしょう。